ラリー・ウィルソンはマジックをまじめに受け止めない。彼の最新作ワンダーランドを観たことがある人なら、誰もがうなずくはずである。彼は果たしてコメディアンなのか、それともマジシャンなのか?人々の噂をよそに、ラリー当人はあっけらかんとしている。
観客は始終笑い通しで、次々と目に飛び込んでくる奇妙な現象が実際マジックであるということに気付いてさえいない様子だ。
ラリーは「観客を騙したいわけじゃないんだ。ただちょっとびっくりさせたいだけ」と率直に言う。ワンダーランドは、まさにその言葉通りである。彼のエネルギッシュなパフォーマンスと歯切れのいいアドリブのおかげで、台本通りなのかそれとも思いがけない
ハプニングが起こっているのか、見ている方は全く
見当がつかない。まさにワンダーランド、『不思議の国』である。
どのような経緯でラリーはワンダーランドをプロデュースすることになったのだろうか?
彼の職歴は非常にユニークである。最初にパフォーマーとして活動を始めたのは、ハリウッドの会員制クラブ『マジックキャッスル』。コメディとマジックをミックスさせた彼の芸風は、威厳高いマジシャンたちの間でも高い評価を受ける。
その後間もなくラスベガス、アトランティックシティ、レイクタホなどのシアターでサミー・デイビス・ジュニア、アン・マーガレット、ザ・パイオニア・シスターズなどと共演するようになる。それらがきっかけでテレビ出演もするようになり、エミー賞にノミネートされたこともある。
また、テレビ番組や映画のマジック指導者としての活躍も枚挙にいとまがない。最近の映画では、
『不法執刀』でティモシー・ハットンにマジック指導をしている。
ラリー:「既存のマジックの概念から自分を解放して何か本当に自分らしいことができれば、きっと
ものすごくユニークなものになるだろうと思った。そして考えた結果、自分の好きなものはすべて1960年代のもの(音楽、ファッション、ライフスタイル)だという結論に達した。そうしたら、60年代が文化に与えた素晴らしい影響と劇場芸術を結びつけるには『不思議の国のアリス』しかない!ってすぐにピンときたんだ。だって、これほどイッちゃってて、シュールで、誰もが知ってる童話は他にないからね」
ワンダーランドはこうして生まれたわけである。長い付き合いのあるハラスホテルが公演場所として
選ばれ、開演初日から終演後の現在に至るまで、その評判は非常に高い。
ラリーは知る人ぞ知るポーカーの名人でもある。長年カジノ街で仕事をしてきたおかげで、腕を磨く
時間がたっぷりあった。
ラリー:「世界トップクラスのプレーヤーたちが見かねて、僕の悪い点を親切に指導してくれた。そのうちに腕が上がっていって、小さなトーナメントで優勝するまでになったんだ」
マジック、コメディー、舞台芸術の奇妙な融合を観客が受け入れてくれたことを、ラリーはとても
喜んでいる。
ラリー:「近年、観客はもっと激しい劇場体験を求めている。ショーを見に出かける人たちは、何かに
浸りたい、何かを感じたい、と思っているんだ」
ワンダーランドが様々な観客層に支持されている理由はまさにここにある。
ラリー:「マジックはトリックじゃない。非現実の世界への小旅行なんだ」